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所長からのメッセージ バックナンバー 2015年

消費税の軽減税率(第61号 2015.9.25発行)

 平成29年4月から消費税率は10%に引き上げられますが政府はその際に、食料品を中心に軽減税率を適用すると約束しました。その政府案のたたき台となる財務省の案が示されました。それによると、①軽減税率の対象は酒を除く全ての飲食料品で、外食も含む。②消費税10%を支払った後に2%分が還付されるが、還付額に上限を設ける。③上限は一人当たり年4000円超⑤上限額は原則、世帯単位で合算して計算する仕組みとする。以上が概略です。消費者は買い物の際にマイナンバーカードをレジにかざして10%の消費税を支払うが、金額に応じたポイントを獲得し後日本人名義の口座で還付金を受け取るという仕組みです。小売店などの事業者は10%の単一税率で納税できるため、請求書などに商品ごとの税率や税額などを記載するインボイス(税額票)を導入する必要がなくなる反面、マイナンバーの読み取るシステムを準備する必要が生じます。政府は読み取るだけであれば、一万円程度で導入できるし、無償での支給も検討すると言っています。

 消費者の立場からは、四六時中マイナンバーカードを財布の中に入れておかねばならないし紛失が心配だ。何を何時買ったか全て政府に把握されてしまうのではないか?税務署から還付されると言われるが手続きが面倒だ。それに、買い物をしたときに消費税が安くなるわけではないので減税の恩恵の実感がわかない、などの不満・不安が出るでしょう。

 飲食料品に対する消費税の軽減税率の適用は、低所得者ほど負担が強まる消費税の逆進性を緩和する大目的のためです。今、政府に求められているのは、消費者にも事業者にも分かりやすく、優しい消費税の軽減です。

 専門家の中には、給付型の税額控除を使ってみてはと言う意見もあります。標準的な所得の人が飲食料品を購入する金額に対する消費税の減税分を年末調整や確定申告の際に、所得税から減額し、減額しきれないものは還付する。マイナンバーを使えば不正請求も防げるはずです。政府には消費者・中小事業者の立場に立った減税策を考えて欲しいものです。

四国遍路(第60号 2015.5.25発行)

昨年の5月から今年の5月まで3回に渡り延べ16日を掛けて四国の弘法大師の霊場を妻と伴に15名の仲間とお参りしてきました。定年を迎える身になったら四国のお寺を訪ね歩きたいとかねがね考えていた矢先に、妻の友人が主催する四国遍路があると知り仲間に加えて戴きました。今回は八十八ヶ所と更に別格の二十ヶ所を加え108の寺を巡る旅となりました。折しも弘法大師が霊場を開創してから1200年に当たり各寺院は巡礼者で賑わっていました。
ここで四国遍路を経験していない方に、遍路の作法をご紹介します。
服装は白が基本です。必ずしも白ずくめになる必要はありませんが、白衣(道中衣)・輪袈裟(袈裟を簡略化したもの)・納経帳(朱印帳)・金剛杖は必需品です。
参拝時の作法ですが、霊場(お寺)に到着したら山門の前で立ち止まり合掌一礼して境内に入ります。手洗い所で手を洗い身を清め、本堂にて献灯、献香し納札(参拝者の住所・氏名等を記載した紙片)を納め礼拝し全員でお経を奉納します。読経にも決まりがあります。開経偈から始まり懺悔文・般若心経・御宝号(南無大師遍照金剛)等、十二のお経を唱えます。本堂の参拝が終了すると弘法大師を奉る大師堂で本堂と同じ手順で礼拝、読経し納経所にて納経帳にお納経(朱印)をいただき、山門に合掌一礼し参拝が終了します。グループでの遍路では多くの場合、遍路に精通した先達が同行し読経の指導や、お参りしている霊場と弘法大師との関わり合いなどを説明してくれます。又、納経も同行しているガイドさんが全員の納経帳を預かり、参拝している間に納経所で朱印をいだいてくれます。
遍路をしていると毎日数名の歩き遍路に出会います。八十八ヶ所を歩いての遍路は約1500㎞に及ぶそうです。青年が大きなリュックを背に日焼けして一段と精悍になった顔でお参りする姿に感動を覚えるのは私だけではないでしょう。
八十八ヶ寺のお参りが終わる(結願)と、高野山の奥の院に眠る弘法大師に参拝し遍路は満願となり名実ともに終了します。何度も遍路に出向く巡礼者の気持ちを、結願したときの感動の中で少し理解できたような気がしました。

中小企業の行方(第59号 2015.1.20発行)

昨年の長野県は沢山の災害に見舞われました。7月は南木曽の土石流、9月には御嶽山の噴火、11月の長野県北部地震では幸いなことに死者は出なかったものの白馬・小谷地域に甚大な被害が出ました。多くの方々が仮住まいで正月を迎えることを余儀なくされました。
経済状態も中小零細企業にとっては思わしくなく、消費税の増税以降、消費者の購買意欲も盛り上がりません。前号(58号)で指摘した10%への再増税への配慮は安倍首相が総選挙の洗礼を受け1年半先延ばしになりましたが事業者の事務負担が心配される軽減税率の適用が確実な情勢となりました。アベノミクスの第三の矢(成長戦略)が全国津々浦々に届くには数年を要するでしょう。
政府の成長戦略策定の中で気になることがあります。少々乱暴な表現ですがダメ(弱い)な企業の切り捨てです。今まで政府は日本の産業の成長のために中小零細企業を含む全ての企業の保護・育成に力を入れてきました。長く続いたデフレ経済の中で競争力を失い力の弱った企業、再生・経営支援するために各種の法律を作り、金融庁をして全国の金融機関に中小企業への金融を柔軟に対応せしめました。平成23年3月に終了した金融円滑化法に代わり24年8月から施行された中小企業経営力強化支援法は、税理士や金融機関等による認定経営革新等支援機関制度を創設し中小企業に対して専門性の高い支援事業を実現し、事業計画の策定等を通じて経営力の強化を支援するものです。これに沿って経営計画を策定し実行すれば現在新規の融資が止まっている企業も新たな資金調達の道が開ける事となります。
政府はこの法律を持ってしても立ち直れない企業には、次の一手は考えないでしょう。生産性の悪い(儲けが少なく借入金も返せない)企業には転業・廃業の道しか残されないでしょう。中小企業経営力強化法はその附則に施行後5年を目処に必要があれば検討するとされています。残された期間は3年です。この間に生き残りをかけた計画を策定・実行し、未来へ続く道程を歩みましょう。

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